急成長スタートアップのLayerX、エンジニアコミュニティでの活躍が採用の原動力に
「すべての経済活動を、デジタル化する。」をミッションに掲げるSaaS/FintechスタートアップのLayerX。2018年の創業当初はブロックチェーン事業が主でしたが、2020年頃にピボット。現在は、日本社会全体の課題であるデジタル化に注力しています。
そんなLayerXが、新卒エンジニア採用に力を入れている理由とは。執行役員CHRO(Chief Human Resource Officer)石黒卓弥さん、エンジニアの白井清貴さんに、サポーターズ 代表 楓が聞きました。
新卒エンジニア採用・育成のポイント
新卒エンジニア採用は「覚悟」
エンジニアコミュニティのつながりで認知を拡大
ソフトウェア企業は人が全て。熱いオファーレターで思いを伝える
Bet Technology――技術に賭ける会社
楓 LayerXはどんな会社ですか?
石黒さん ソフトウェア中心の会社です。つまり、事業の根幹にソフトウェアがあり、変化にスピーディに対応していくアジャイル経営を意識しています。これを実現できている企業は、日本にいくつあるだろう、と。そもそも共同代表のCTO松本勇気、CEO福島良典が二人ともソフトウェアエンジニアという点も非常にユニークだと思います。松本は、今もバリバリコードを書いていますから、現場のエンジニアからはよく、「(経営陣に)理解してもらえるのがうれしい」という声を聞きますね。
ただ、「ソフトウェア中心=エンジニアがえらい」というわけではありません。私たちには、「Bet Technology(技術に賭けよう)」という行動指針があります。エンジニアだけではなく、例えば営業チームも、どうしたらソフトウェア的に改善できるか日々試行錯誤を続けています。メンバー全員が、効率化・自動化を追求しているのです。
白井さん お客様への愛、プロダクトへの愛も感じます。お客様にいいものを届けたいという意識が通底しているんです。迷ったときは、「お客様は何がしたかったんだっけ?」と壁打ちをしたり、エンジニアが直接ヒアリングさせていただくこともあります。
楓 エンジニアがユーザーに直接インタビューすること自体、珍しいですよね。
白井さん 「バクラク」はリリースして1年半ということもあって、もっとお客様のことを知りたいというのが大きな理由です。また、コロナ禍で商談がオンラインに移行したことも一つのきっかけとなりました。
私たちは、お客様の了承をいただき、全ての商談をZoomで録画しています。録画しておけば、いただいた要望を余すことなく振り返ることができますし、失敗した商談も、お客様がワッと喜んでくれた瞬間も全て見返すことができます。私たちが作った機能でお客様が喜んでくれたことを、営業担当者がメンションして伝えてくれることもあります。お客様の声がかなりのモチベーションにつながっていますね。
石黒さん 「何事も自分の目で確かめたい」というエンジニアが多いですよね。「自分はエンジニアだから開発をする人」という枠を定めず、積極的にお客様の声を聞く。そのほうが楽しいのだと思います。
新卒エンジニア採用に力を入れる理由
楓 すでにハイレベルなエンジニアが集まっていることを考えると、まだ新卒エンジニア採用に力を入れるフェーズではないようにも思えます。なぜ、新卒エンジニア採用をスタートしたのでしょうか?
石黒さん 一言でいうと「覚悟」です。新卒市場は、会社が認知されていなければ相手にすらされません。新卒採用の認知を獲得するには、一般的に2年前、遅くても1年半前には採用の準備を始めなければ間に合いませんし、かなりの投資も必要です。更にそれを5~10年単位で続けるとなると相当な覚悟です。私たちがリスペクトするB to B向けのソフトウェア企業は、皆さんそこに投資し、次の世代を育てることで継続的に事業を成長させています。そこで、「私たちもやらない理由はない」と。
2022年卒は1名が入社し、2023年卒はすでに2名が内定しています。2024年卒はこれからですが、5~10名が入社してくれたらいいなと。今のところ、「サポーターズでLayerXを知りました」というインターン学生も来てくれています。
もう一つ大事な話をすると、私たちはそもそも新卒エンジニアを一般的な意味での新卒だとは捉えてはいません。白井も新卒入社ではありますが、学生時代から数えてすでに4年の実務経験を積んでいました。新卒とか中途とかそういったことだけでは、エンジニアとしての素晴らしさは測り切れないと考えています。
急成長の真っ只中のスタートアップで働く魅力
楓 LayerXに興味を持ってくれた学生とは、どんな話をされるんですか?
石黒さん 主には、働く環境について話をします。前提として、成長したい、すごいエンジニアと一緒に働きたい、エンジニアリングを通じて社会に貢献したいという学生が多いです。
ただ、人間の成長は環境によって決まります。いわゆるメガベンチャーは、決算資料などを見てみるとその多くが110%~150%などの素晴らしい事業成長を遂げています。一方、LayerXはというと、数100%の成長の真っ只中にいます。エンジニアとしてどちらが成長できるでしょうか。
「急成長するスタートアップで自分も成長したい」という学生には、「当社にいい山がありますよ」というお話をしています。
楓 実際、白井さんはなぜLayerXに入社を決めたのでしょうか?
白井さん 最後の決め手は、経営陣からのオファーレターでした。一人ひとりから、「何を期待していて、だから入社してほしいんだ」という熱いメッセージがびっしり書かれていて感動したのを覚えています。
石黒さん ソフトウェアを作るのが人である以上、ソフトウェア企業はどこまでいっても人が全てなんです。ですから、そこに全力を注ぐべきだと思います。
憧れのエンジニアに直接メンションできる環境
楓 入社後の育成についてはどう考えていますか?
石黒さん 最近、MIXIさんやサイボウズさんが社内研修資料を公開しているのですが、どれも素晴らしく、参考にさせていただいています。エンジニアが自然と伸びていくような仕組みを作っていきたいですね。
白井さん その点でも、LayerXのエンジニア文化が良い方向に働くと思っています。私は入社前からチームに入って仕事をはじめ、手厚くレビューをしてもらったり、オンボーディングのときには他のチームと交流させてもらったり、要領をつかんでから入社することができました。相談しづらい人が社内に一人もいないんです。分からないことは気軽にメンションを飛ばして聞けるので、居心地がいいですね。
楓 エンジニア界隈の有名人にメンションできるって、究極の福利厚生ですよね。
白井さん 確かに(笑)。僕が就活生のときに憧れていたDMM CTOの松本勇気さん(現LayerX 代表取締役CTO)や、メルカリ CTOの名村卓さん(現LayerX 執行役員)にメンション飛ばすとか、一緒にランチするとか、すごいよなというのが正直な気持ちです。
エンジニアコミュニティのつながりでLayerXの認知を拡大
楓 いま採用において最も注力していることは何ですか?
石黒さん LayerXの認知を広げることです。仮に社名を知ってくれたとしても、「バクラク」を知らないと思いますし、「バクラク」を知ってくれたとしても、どのような価値があるサービスなのか具体的なイメージが湧くかというと、そうではないと思います。そこが難しいところです。「自分が入社したい会社」として認知してもらうには、相当時間がかかると思います。
ただ、興味を持っていただいて、何度も一対一で話せば、分かっていただけるとは思ってます。サポーターズを活用している理由の一つは、一対一で学生としっかり話せるところに魅力を感じているからです。
また、エンジニアコミュニティとのつながりも差別化につながると思っています。実は、白井は同世代のエンジニアコミュニティで活動していて友人が多いのです。結局、就職活動で最後のひと押しになるのは、仲間の存在です。現に、白井が入社してからインターンに来てくれる学生がめちゃくちゃ増えているんです。「白井さんからいいって聞きました」って。
サポーターズのユニークなところは、イベントやインターンなどを通してエンジニア学生のコミュニティができあがっているところです。今後はそのコミュニティの皆さんと積極的にお会いしていきたいと思っています。「LayerXって聞いたこともありませんでした」とか言われても全然いいです。LayerXのことを知ってほしいし、エンジニア学生の視点も知りたいと思っています。
サポーターズを使う理由
石黒さん そんなわけで新卒エンジニア採用に関しては、自社リファラルを除くと、サポーターズさんのみを活用しています。
楓 嬉しいのですが、なぜでしょうか?
石黒さん 先ほどお話したように、私たちは学生からの認知を広げていく上で、エンジニアコミュニティにアプローチしていきたいと思っています。ですから、サポーターズさん、もしくは大学の研究室を見ているんです。ただ、後者は5年~10年、ある程度の労力をかけて関係性を作っていく必要があります。前者は、サポーターズさん全面協力のもと、2~5年でブランドを作っていけるのではないかと。
楓 白井さんは学生時代、ユーザーとしてサポーターズを活用してくれていましたね。
白井さん はじめは先輩からの紹介でした。ちょうど就活を考え始めた時期で、「参加したら交通費がもらえます」みたいな企画に参加しました(笑)。
その企画で他のエンジニア学生と出会い、SNSでも話すようになりました。その仲間たちとまたインターンで一緒になって、さらに仲良くなって。社会人になった今も交流を続けています。
石黒さん これがコミュニティですよね。
もう一つ、エンジニアコミュニティを大事にしたい理由をお伝えすると、人は行動を起こすとき、ストーリーが必要なのです。白井も「他にも良い会社から声がかかっているのに、なぜLayerXに行くの?」って100回は聞かれたと思うんです。すごく悩んだのではないでしょうか。でも結局「憧れの環境があって」と揺るがなかった。次に興味を持ってくれる学生は、その白井の姿を見聞きして「先に入社した先輩がさ」とか言ってくれると思うんです。そうなれば、LayerXはもう全く知らない会社ではなくなります。
今年から参加しているイベントでの話ですが、サポーターズのイベントの際に学生さんが選ぶ「採用担当者の人柄ランキング」でLayerXは2カ月くらい1位だったんですよね。「なんか優しそうな人事がいた会社だよね」と。認知って入り口はそういうことでいいんです。全く知らない会社ではなく、「どこかで見たことある会社」になることが大事。今年・来年はそこを徹底していこうと思います。
技育プロジェクトに参画する理由
楓 採用とは別に、未来の “技” 術者を “育” てる「技育プロジェクト」にも参画してくださっています。
石黒さん 私たちの行動指針「徳」には、長く大事なことにコミットをしようという視点があります。技育プロジェクトはまさにこれだなと。
結局、エンジニアが増えていかなければ、日本全体のデジタル化が遅れていきます。LayerXは、プロダクトマネージャーやクリエイター、ものづくりのカンファレンスにも積極的に参画しています。サポーターズが取り組んでいる一連のエンジニア育成プロジェクトにも非常に共感していますし、大事にしていきたいと思っています。
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