ゆめみをテックブランド10位に押し上げた「採用ドリブン経営」
DX・内製化支援のリーディングカンパニー、ゆめみ。ここ数年、学生エンジニアの間でぐんぐん知名度を上げ、「エンジニアが選ぶ開発者体験が良いイメージのある企業ランキング」では、メガベンチャーとともにトップ10にランクインしています。その背景には、「日本一採用に力を入れている経営者」を目指す代表取締役 片岡俊行さんの戦略があるようです。
技育プロジェクトに始まり、イベント、スカウト、人材紹介とフルラインナップに参画し、エンジニア学生を増やし、育成しながら採用するという採用における理想を体現しています。その真意を代表 楓が聞きました。
新卒エンジニア採用・育成のポイント
経営者自身が採用に全力コミット
「新卒エンジニアが行きたい会社」の特長を調べ、それらでナンバー1になることで学生認知度を獲得
人材育成でもナンバー1の会社を目指し、業務の優先順位を変える
「アジャイル組織になる」 2018年が大転換期
– 2018年、片岡さんが「アジャイル組織」への変革を宣言し、新卒エンジニア採用も一気に加速した印象です。組織変革の狙いを教えてください。
多様化するお客さまのニーズに応え、品質と柔軟性を両立したいと思ったことがきっかけです。現在は社員数約300人の当社ですが、当時は100人ほどで、どんどん細分化していくニーズに応えながら自己研鑽もしていくとなると、iOSエンジニアもAndroidエンジニアも全然足りませんでした。
このまま従来型の組織体制を続けると何が起きるのか。仮に品質を重視しようと標準的な型を作れば、きめ細やかな対応が難しくなる。「ゆめみさん、大企業みたいになっちゃいましたね」と言われるでしょう。しかし、型を決めずに対応すれば、「ゆめみさんはチームによって品質に当たり外れがありますね」となるだろうなと。
品質と柔軟性は両立が難しいものです。だからこそ、両立できれば大きな価値になる。どうすれば両立できるのか模索する中で、特定のリーダーや上司を作らず、みんなでアイデアを出し合いながら一つの仕事を進めていく「ネットワーク組織」や、目的のために進化し続ける「ティール組織」の存在を知ったんです。
中でも、オランダの在宅ケア組織「ビュートゾルフ」には衝撃を受けました。「ビュートゾルフ」は、一万人規模の組織になってもメンバーが自立していて管理職がいません。オランダの働きがいのある会社ナンバー1に選ばれただけでなく、顧客からの評価も高い。その上、国の医療費を数兆円削減している奇跡のような組織です。「これだ!」と思いました。
現在、ゆめみが実践している「アジャイル組織」は、チームやプロジェクトのメンバー編成・異動が本人の判断で行われ、かつ機動的に実行されます。代表取締役権限を全メンバーに移譲し、プロリクによってあらゆる意思決定を行う「全員CEO制度」や、「給料自己決定制度」、「有給取り放題制度」など思い切った制度も導入しました。今振り返れば、ここからゆめみの第二創業期がスタートしたのだと思います。
なぜ新卒エンジニア採用に舵を切ったのか
– 「アジャイル組織」をつくるなら、すでに自立している中途エンジニアの採用を強化するほうがいい気もします。なぜ新卒エンジニア採用に力を入れているのでしょうか?
お客さまのニーズにきめ細かく応えるためには、2018年から2026年の間に1000人規模の組織になる必要があります。毎年100人のエンジニアを採用する計算になりますが、中途採用の難易度は年々上がっています。新卒エンジニアを100人育成し、戦力化するほうが、圧倒的に実現可能性が高いと思ったんです。
– 新卒エンジニア採用も、競合ひしめく厳しい環境であることに変わりはありません。他社とどう差別化していったのでしょうか?
2019年からは、「日本一採用に力を入れている経営者になる」を目標に、事業方針レベルで採用力の向上に取り組んできました。どのお客さまと付き合うかといった営業方針も見直しました。つまり「採用ドリブン経営」です。
メガベンチャーと戦わないことも重要です。メガベンチャーの魅力は自社プロダクトを持っていること。サービス志向の学生はそちらを選ぶでしょう。ですが、テック志向でプロフェッショナルとして成長したい学生には、ゆめみがハマると思うんです。
エンジニアを目指す学生は毎年2万人前後。そのうち積極的にアウトプットしている学生は10%。そのうち約3割は、特定のプロジェクトや事業ドメインに関心があるわけではない、と言われています。となると、約600人はゆめみを選ぶ可能性があるということです。「テック志向の会社」としてブランドを確立できれば、600人のうち150人は採用できるのではないか。つまり、新卒エンジニア100人採用も不可能ではないということです。
わずか2年で学生認知度急上昇の理由
– 新卒エンジニア採用で苦労されたことは何ですか?
ゆめみの認知度が低かったことですね。2021年3月にサポーターズに実施いただいたアンケートでは認知度54%。2020年度は50%を切っていました。ゆめみはクライアントワークの会社で、CMも打っていません。認知度を上げるにはどうしたらいいのか考えました。
そこで、2019年から始めたのが「ナンバー1戦略」です。「これに関してはナンバー1」という数値的な実績を3年がかりで作っていきました。というのも、新卒エンジニアに行きたい会社の特長とたずねると、「積極的にアウトプットをしている会社」、「頻繁に勉強会を開催している会社」、「スキルアップのための補助が充実している会社」など共通点があったんです。それらでナンバー1を目指し、学生に関心を持ってもらえる材料づくりをしました。
まずは、積極的にアウトプットをしている会社。Qiitaで投稿数ナンバー1を目指しました。自社のブログではなく外部のQiitaにしたのは、「そのほうが3倍書く」というのが分かっていたからです。
1年以内に、QiitaのLGTM (Looks Good To Me)数と投稿数でナンバー1になりました。これで「積極的にアウトプットをしている会社に入りたい」と言う学生に、「ゆめみはQiitaでナンバー1」と言えるようになりました。アウトプットする会社に惹かれる学生は、入社後やはり積極的にアウトプットしてくれます。良い循環が生まれました。
次に、Slackのコミュニケーションでナンバー1になりました。これは、Slack社が計測している「Maturity Score」に基づくもので、日本一Slackを使いこなしている会社ということです。
2021年は、勉強会でナンバー1を目指しました。今は月170件ほど勉強会が開かれていますが、2026年には月800回、年1万回の勉強会を開催し、一人当たり勉強会開催数で圧倒的1位を狙っています。
新卒エンジニアの育成
– 新卒エンジニアの育成はどのように行っているのでしょうか?
2018年までは、基本的に自学してもらう方針でした。しかし、ペアプログラミングの効果を調査する中で、新卒エンジニア同士が組んだ場合と、新卒とテックリードが組んだ場合では、後者のほうが将来的にも伸びるということが分かったんです。
要は、エラーが起きたときの対処や、行き詰まったときの調べ方、設計の考え方をしっかり教えこむことが、その後の自学にも良い影響を及ぼしていたんです。それからは、育成でも日本一の会社を目指し、優先順位を変えました。全業務の中で1番優先順位が高いのは採用。2番目が育成。3番目がクライアントワークです。
– 「クライアントワークが忙しくて採用や育成に協力できない」というのは「なし」ということですね。
そうですね。でも、本業がDXや内製化の支援ですから、育成が得意なメンバーは多いように思います。入社1カ月後のアンケートでは、7割が「ゆめみは親切な人が多い」と書いてくれます。
成果も現れています。メガベンチャー各社ではだいたい3年目でリードエンジニアになるようです。ゆめみでは、早ければ1年、平均2年でそのレベルに到達しています。
なぜサポーターズを使っているのか
– サポーターズを活用してくださっているのはなぜですか?「技育プロジェクト」に始まり、イベント、スカウト、人材紹介とフルラインナップを使ってくださっています。
実は、数年前までサポーターズを知らなかったんです。でも、メガベンチャーの新卒採用の多くが実はサポーターズの支援だと知って驚きました。みんなで「未来の技術者を育てる」という「技育プロジェクト」の雰囲気も好きだし、「自ら考え、自ら創る人を増やす」というミッションにも共感しています。そんなサポーターズとやれる限りやってみようと。
成果も上がっています。来年入社予定のエンジニア約70人中、3分の1近くがサポーターズ経由になりそうです。
– サポーターズにとっても、採用支援先として、ゆめみが一つの理想形だと思っています。一連の「技育プロジェクト」を通し、まず「技育祭」で知名度を上げ、「技育展」などで学生を育て、イベントやスカウトで採用に向けた接点を持つといった段階を踏んでいただき、エンジニア学生を増やし、育成しながら採用するということを体現されています。採用が始まる頃には、学生の間で「ゆめみはこういう会社」というイメージも確立されているので、私たちも支援しやすいです。
サポーターズのキャリアアドバイザーにも助けられています。新卒エンジニア特有の事情かもしれませんが、昨日まで「ゆめみが第一志望です」と言っていた学生が、他の内定が出た途端「そっちに行きます」みたいな。たくさん内定が出る学生ほど悩んでしまうんですよね。
だからこそ、サポーターズのキャリアアドバイザーが学生に寄り添い、「それってどうなの? やりたいことからブレてない?」と問いかけ、本人にとって一番いい選択を支援していく。学生の心境の変化に応じたフィードバックやアドバイスが圧倒的にきめ細かいんです。その姿を垣間見たとき、信頼できるなと思いました。
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