「NTTデータって開発できるんですか?」「いや、めっちゃ作ってまっせ」
日本を代表するシステムインテグレーター・NTTデータ。世界55カ国で約15万人(2022年3月31日時点)の社員が働いています。ただ、最近のSIerに対する風当たりの強さには、新卒エンジニア採用の面でも少々頭を抱えているようで……同社のコーポレート統括本部 人事本部 人事統括部 採用担当 村上裕一さん、浅沼佑紀さんに、サポーターズ楓が聞きました。
新卒エンジニア採用・育成のポイント
尖ったエンジニア学生にアプローチすべくサポーターズを活用
エンジニアの採用活動は早めにスタート、800名規模のインターンを実施
世間的な知名度だけではなく、エンジニア学生の間でのポジティブな口コミが重要
誤解だらけのNTTデータ
楓 サポーターズが実施した「2024年卒 エンジニア学生対象 就職希望企業ランキング」で、NTTデータは7位にランクインされました。ですから正直なところ、採用には全く困っていないのではないか、と思っているのですが。
村上さん NTTデータは比較的さまざまな学生に興味を持っていただいていて、実際にエンジニア以外の職種の方も多く活躍しています。ところが、エンジニア志望の学生に絞ると、ランキングがガッと下がってしまうんです。「あの会社に行くと開発ができない」とか「プロジェクトマネジメントしかやらないんでしょ」といったイメージが広がってしまっているのです。そこに危機感を覚え、サポーターズのような尖ったエンジニア学生がいる場所に踏み込んでみました。
サポーターズのイベントでエンジニア学生と話すと、一番多い質問は「NTTデータさんって開発できるんですか?」。できますよと言うと、「え?」みたいな。多分もう開発する会社とは認識していない学生が多いんじゃないかなと思います。
浅沼さん 言葉を選ばずに言えば、「他の開発会社に丸投げして、あなたたちは何も作れないんでしょ」という。いやいや、めっちゃ作りまっせ。
村上さん それから「ウォーターフォールの会社なんでしょ」もよく言われます。これも実際は少し違っています。
そもそも開発手法は単なる手段であって、お客さまのニーズに応じて最適なものを選ぶことになりますが、私たちは決してウォーターフォール一辺倒ではなく、アジャイルなプロジェクトも数多く存在しています。例えば、お客さまの中でもDXや新規事業に力を入れている企業では、プロジェクトのサイクルが非常に早くなっています。お客さまからの要望をもとにプログラミングして動くものを見せ、フィードバックをもらってすぐ反映させるという場面が今まで以上に増えているんです。
社内には、アジャイルな開発手法を専門に研究する部隊もあります。ここでは、TERASOLUNA(テラソルナ)やAltemista(アルテミスタ)といったアジャイルのフレームワークやプラットフォームを開発しています。
日本のDXを根幹から変えるNTTデータ
楓 NTTデータならではの強みや面白さって何ですか?
村上さん お客さまに深く入り込み、チームの一員として動けることでしょうか。お客さまから「ベンダーから提案を受けたんだけど、村上さんの意見も聞かせてくれませんか?」ということもよくあります。
また、非常に多くのお客さまを抱えているので、お客さま同士をつなぎ、その業界全体に影響を与えるような大きな取り組みに発展させることもできます。
例えば、貿易のDXを目指す「トレードワルツ」というプロジェクトでは、NTTデータを事務局とした業界横断のコンソーシアムを発足し、商社・銀行・保険・船会社等の関係者と共にデジタル技術を活用した貿易業務に対する議論を重ね、その結果をもとにブロックチェーン技術を活用した貿易情報連携プラットフォーム「TradeWaltz」の開発を進めてきました。このように産業の枠組みを超えた協業も手がけています。
楓 なるほど、「産業構造から変える」といったプロジェクトもあるんですね。
浅沼さん そういうプロジェクトは他にもたくさんありますよ。最近では社会課題が複雑で高度化しているので、特定の業界や特定の事業部だけでは解決が難しいことから、「業際(多業種で既存の枠にとらわれないサービス開発をすること)」や「越境」と呼ばれるものが私たちの仕事のキーワードだったりします。
村上さん 最近では、お客さま社内の人財育成を目的とした「デジタルサクセス・アカデミー」という取り組みも始めています。DXや内製化を進めるには、お客さま自身のITスキルも高度化していく必要がありますが、一朝一夕にはいかないのが実情です。そこで、われわれが人財育成の伴走役をしているんです。
志望動機は、「世の中が動く仕組みを作りたい」
楓 ところで、お二人はなぜNTTデータに入社したんですか?
浅沼さん 私は学生時代、「大学で学んだデジタル技術を生かして世の中の景色を変えられるような、そんな社会の仕組みを作るんだ」と考えていました。そんなとき、NTTデータを知って、ここだ!と思いました。お客様の悩みや課題を実際に現場で生の声として聞いて、何をすべきか、何ができるかを一緒に考えて実現していく、時には要件を整理したり、時にはコーディングしたり、時にはステークホルダを調整したり、という縦横無尽に活躍する泥くさい作業が、私には楽しく思えたんです。
世の中のエンジニアって、結構簡単に「こうすればいいじゃん」「ああすればいいじゃん」ってすごく正論をぶつけますよね。「テクノロジーに溺れている」と言ったらめっちゃ怒られるんだけど。
でも、リアルな世界で物事を変化させたり、何か実現しようとすると、見える範囲だけでなく、見えないところにもいろいろな制約があって、いろいろなステークホルダーが階層のように存在している。最適解は必ずしも一つではないし、一度は最適解だと思ったことをまた深く掘り下げたり、俯瞰で見直すことも必要だったりする。技術も絶対に必要だし大事なんですけど、技術だけではどうにもならないことが多すぎるんですよ。ずっとそういう泥臭い利害関係の調整をしていたら、物事の本質を見抜くことであったり、視野の広さや隠れたステークホルダーを見つけ出すのが得意になりました。
ただ、正論をぶつけるには技術に対する深い知見と鋭い先見性が必要なんですね。その観点では、最先端の技術トレンドや開発標準はこれだ、みたいなことは、実際に手を動かしている速度や回数に裏打ちされているWeb系の企業に就職したエンジニアのほうが詳しいと思います。
楓 NTTデータも最新技術を検証したり、そのうえ自分たちで作ってしまうということもあるんですよね?
浅沼さん そうなのですが、見ているところが違う気がします。NTTデータはお客様からシステムやサービスの全体像を見ることを期待されていることが多いので、正直に言うと、私たちはお客様のほうを、あるべき姿と共に、背景や事情なんかも含めて親身に見すぎてしまいます。純粋に技術を中心に見ているエンジニアとは、そこが大きく違うのではないかと思います。もちろんNTTデータにも技術が大好きで技術を中心に活躍している社員はいますけどね。
楓 どんなときにそれを感じますか?
村上さん 例えば、私たちはお客さまのシステムで失敗しないように枯れた技術を選択することがあります。枯れた技術が悪いとは全く思っていません。でも、他のエンジニアからすれば、枯れた技術を選択すること自体ダサいのかもしれません。そういったマインドの違いは大きいかなと思います。別の観点として、枯れた技術を躊躇なく採用できるのは、「最新技術を深く理解しているから」というのもあると思っているので、この辺りは弊社らしさかなとも思います。
800名規模のインターンを実施
楓 NTTデータの採用活動で特徴的なのがインターンですよね。
村上さん 毎年7月中旬~9月頭まで実施しているプロジェクト型インターンシップとワークショップ型インターンシップですね。今年は合わせて約800名が参加してくれました。冬もプロジェクト型インターンシップを実施しています。
楓 800名規模のインターンって、私は他に聞いたことがありません。
村上さん 個人的にはもっと増やしたいんです。夏だけで1000名いきたいですね。就活のスタートが早期化しているので、夏の段階で認知してもらえないとその後かなり苦戦するんです。多少無理をしてでも、夏の段階でNTTデータが何をしている会社なのか知ってほしいと思っています。
インターン中は、なるべく学生扱いしないようにしています。エンジニア学生の間で「NTTデータでインターンをすると、夏の間にすごく成長できるよ」という口コミが広がるようにしたいんです。今年やっとそれが実ってきて、「なぜインターンに来てくれたの?」と聞いたら「先輩から『取り敢えずこれは行っておけ』と言われたんです」って。
浅沼さん 実際に私たちのインターンを経験してから他社のインターンにチャレンジした学生はみんな口を揃えて、「NTTデータのインターンは正直難しくてなかなか活躍するのにも大変だったけど、あれを経験してからは他のところでは無双できました!めっちゃ成長を感じます!」と言ってくれますね。我々社員も相当にエネルギーを使うプログラムなので、やっぱりそういう声は仮に学生が他社に入社することになったとしても嬉しいですよね。
村上さん 結局、会社の知名度だけが高くてもダメなんです。例えば、私たちが就活イベントで「うちに入れば成長できる」と言ったところで、正直信用できないじゃないですか。「あの先輩も参加しているなら私もやってみよう」「あの先輩が言うなら本当に成長できるんだ」という流れを作りたいんです。
なぜサポーターズを活用しているのか
楓 そんな中で、なぜサポーターズを利用いただけているのでしょうか?
村上さん サポーターズの学生は、私たちが全力で技術の話をしても全くドン引きしないんです。すでに共通言語があるというか、一般的な就活イベントではできないようなマニアックな技術の話もできますし、「プログラミングで手に職をつければ、会社に所属していながら個人事業主かのような働き方ができる」といったエンジニアのキャリアの話もしています。
楓 そういう話をすると、NTTデータに対する学生たちのイメージは変わっていくのでしょうか?
村上さん そうですね。学生からの質問も技術的に踏み込んだものが多くなったりして、イベント後のアンケートでは「プログラミングができる会社だということを初めて知りました」と書いてくれる学生がいるんです。ですから、サポーターズでの活動は継続していきたいと思っています。