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24新卒採用におけるサマーインターンの位置付けとトレンド

サポーターズ エバンジェリストの久松です。他に合同会社エンジニアリングマネージメントにて社長兼「流しのEM」として複数企業で組織づくりなどを担当しています。本noteでは、新卒エンジニア採用に関する「よもやま話」を月1ペースで発信して参ります。

中途エンジニア採用は2012年から、新卒エンジニア採用は2014新卒の頃から携わっています。今回は新卒の母集団形成の一種であるサマーインターンについて、トレンドを交えながらお話ししていきます。

サマーインターン開催の利点

サマーインターンを開催する利点とは何でしょうか。一般的には優秀な人材との早期接触であると言われています。昨今の優秀な新卒学生は学部1-2年次からアルバイトとして企業での開発を実施しています。続く層は学部3年次や修士1年次のサマーインターンでプログラミングの面白さに気づき、本格的にプログラミングをし始める層です。

従来の新卒一括採用に慣れた方々からは就活の早期化を嘆く声が聞こえますが、IT業界ではフリーランスの一般化によるジョブ型雇用がなし崩し的に進んでおり、年齢ではなくスキルや経験ベースで給与提示をしようという動きが見られます。

実際、早期にプログラミングを開始する層はITエンジニアとして生きていく腹積もりができている傾向にある他、しっかりと情報収集をした上でサマーインターンに臨んでいたりするため優秀な方が多いです。感度やアンテナが高いとも言えるでしょう。

サマーインターンはこうした優秀な学生に対し、早期に実際の社員と接することで働くイメージや、自身が成長できるイメージを持ってもらいやすくなります。

また、若手エンジニアに話を聞くと、私の感覚的には1-2割程度の人材が「一番最初に内定が出たので内定承諾した」という方が居られます。早期の接触をすることで、良い印象で他社に先駆けることがポイントとなります。

新卒採用の特徴として、インターンなどでの楽しかった記憶、成長経験を同級生や後輩に大学内で拡めるというものがあります。「あの企業のインターンは良かった」「学びが多かった」「あのインターンは倍率も高く、参加できたら凄いことだ」というように自社のブランディングにも繋がります。

サマーインターンの期間はどの程度か

サマーインターンの設計をするにあたり、どの程度の期間で実施するかというのが費用や工数の観点からも重要になります。それぞれの特徴や傾向を見ていきます。

1day-3days

最も労力が少ないものになりますが、お勧めしにくいです。

1dayであれば会社説明会が主であり、お互いのマッチングを図るための作業などは厳しいものになります。

3daysなどになるとアイディアソン(新規事業プレゼン)や簡易なハッカソンが可能になります。しかし5-7社を梯子する学生達には「サマーインターンの隙間を埋めるイベント」に過ぎないケースもあり、「一夏の思い出」として忘れられる傾向にあります。

5days-10days

座学、アイディアソン、ハッカソンと一通りのコンテンツを盛り込むことができます。社員との接触時間が長く持てることから双方ともに一緒に働くイメージを持つことができます。

デメリットとしてはある程度エンジニアの力を借りねばならないことから、本業のプロジェクトにいくらかの影響があります。プロジェクト遅延の影響も含め、実施可否を判断しなければなりません。

長期

1-2ヶ月以上のインターンです。実務型のインターンが殆どであるため、最も働くイメージが湧きやすい形態です。

学生に求められるスキルは最も高くなります。長期インターン参加者の全員に内定が出たり、内定承諾されるわけではないのである程度まとまった数の受け入れが必要です。

また、他社のインターンとも日程が被りやすいため、母集団形成に苦労する可能性があります。他社のインターン参加も容認するなどの姿勢が必要です。

サマーインターンのコンテンツ

続いてサマーインターンのコンテンツについてです。こちらも各社で様々なパターンが存在するため、それぞれの特徴について紹介します。

実際に正社員と机を並べての実務

実際にプロダクトの実装に関わって貰うというものです。働くイメージが最も湧きやすく、企業側もややオモテナシが必要な新人を入れるイメージで接することができるため、他の方法に比べて相対的に準備コストが低いです。

一方で課題もあります。一つは情報セキュリティの観点です。PCの貸与をすべきかというのもありますし、NDAの締結と情報教育をセットでカリキュラムに組み込むのが良いでしょう。また、既にサービスインから時間が経過しているサービスによくあるのですが、「度重なる施策でソースコードの可読性が低く、学生が失望して辞退する」というケースもあります。

新規事業・新規サービスのアイディアソン・ハッカソン

コンテスト形式のイベントです。個人情報が多い事業を展開していても完全に独立したイベントであるため、問題にはなりません。

しかし「楽しかった」で終わる危険性があるため、カリキュラムの中に自社の企画部門やマーケティング部門への参加も依頼し、自社サービスを創るための観点をフィードバックを通して理解してもらうことで、サービス共感やサービス志向性の向上を狙う必要があります。

自社サービスのAPIを利用したアイディアソン・ハッカソン

自社サービスへの共感や、サービス志向性を醸成するために有効な手法です。既に公開済みのAPIやドキュメントがある場合、そのAPIを利用したツールや簡易なサイト作成をしてもらうというものです。既にこうしたものがある企業では是非利用を検討して頂ければと思います。

サマーインターンの母集団形成

サマーインターン参加者を集めることを母集団形成と呼びます。具体的な集客方法についてご紹介します。

コーポレートサイト

自社コーポレートサイト内に採用ページを作成し、エントリーを募る方法です。ただ公開しても自社の知名度に依っては人が集まらないため、サマーインターン情報を纏めているサイトへの掲載や、SNSでの発信を進めていくことになります。

1on1(逆求人)イベント

1on1イベントとは、2010年代中盤から広まった方法です。オンラインやオフラインの会場に40名程度の学生と、20社程度の企業担当者が集合します。一般的には下記のような流れになります。


  • イベント前

    • 学生のプロフィールが共有される

    • 企業はその資料を元に声掛け対象をピックアップ

  • イベント当日

    • 企業による会社紹介プレゼン

    • 学生による軽い自己紹介

    • 企業、学生双方からの話したい相手のピックアップ

    • 紹介会社によるマッチング

    • タイムラインの公開(一日8組程度)

    • 学生がブースを構えているところに、タイムラインに沿って面談(30分程度)

      • 学生からの学生時代に力を入れたこと、制作物についてのプレゼン

      • 企業からの質問

      • 企業からの事業紹介

      • サマーインターンの紹介

サマーインターンは複数社を梯子する学生が多いため、承諾してもらいやすいという傾向にあります。事前に学生に向けてのサマーインターン概要資料を作成し臨むようにしましょう。(実施イメージはこちらでもご覧いただけます)

スカウト

近年は学生であってもスカウトを受ける機会が増えています。一般的なプロフィールベースによるスカウトだけでなく、プログラミングのスキルアセスメントと紐づいていることでレベル感が把握できるもの、大学院生に特化したものなど特色があるため、自社の採用要件に応じた媒体選択をしましょう。

なおサポーターズでは1on1イベント、スカウトサービス共に提供しています。ご興味ある方はぜひお問い合わせください(企業様向けサイト)。

サマーインターンの時給相場

特に就業型の実務に近いインターンの場合、時給・日給を払う傾向にあります。2021年、2022年の事例について参考までにご紹介します。概ね1,300〜2,000円程度の時給が相場となっています。

  • LINE株式会社

    • 60万円(6weeks、就業型)

    • 208,000円(13日、ハッカソン)

  • 株式会社ディー・エヌ・エー

    • 10万円(3days)

    • 2,500円/時(長期)

  • 株式会社サイバーエージェント

    • 1,500円/時~2,500円/時(長期)

  • フューチャー株式会社

    • 12,000円/日

  • 株式会社CARTA HOLDINGS

    • 12万円(2週間)

  • ヤフー株式会社

    • 1,300円/時

サマーインターン開催のポイント

これまでお話してきたように、サマーインターンは費用も社内ITエンジニアの工数も纏まって必要なものとなっています。

そのためまずは予算計画を立てる必要があります。紹介会社を利用している場合、自社と同程度の規模の会社がサマーインターンから何名採用できているかをヒアリングしましょう。

また、社内KPIを予め設定・合意し、翌年以降のサマーインターンをどうするか経営層と合意しておくことでより稟議が通りやすくなります。

サマーインターンとは費用対効果を根拠に実施するようなものではありません。あくまで優秀で積極的に動いてきた人材を将来の幹部候補として迎えるためのものです。この位置付けを守ることができれば、より建設的な意思決定をすることができるでしょう。

実際に採用をしていると、本選考期に初めて接触する企業より、本選考期前に接触した企業の方が対象となる学生に内定承諾されやすい傾向にあります。そのため、自社の認知を高め、優秀な学生を採用するためにもサマーインターンは重要な位置づけとなります。実際の開催時期は学生が夏休みに入る8月や9月ですので今からでも間に合う施策はあります。ぜひ一度ご検討ください。