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24新卒ITエンジニア採用マーケット

サポーターズ エバンジェリストの久松です。他に合同会社エンジニアリングマネージメントにて社長兼「流しのEM」として複数企業で組織づくりなどを担当しています。本noteでは、新卒エンジニア採用に関する「よもやま話」を月1ペースで発信して参ります。(第一回は以下)

第二回の今回は24新卒ITエンジニアの採用マーケット感についてです。

採用単価

採用単価には1on1イベントや人材紹介費用などの他に、企業の認知を目的とした各種ブランディング施策で発生する費用が含まれます。特に後者については企業によって分かれるポイントです。

新卒人材紹介サービスでは、スキルが高い新卒を採用したい企業が特別な採用フィーを紹介会社に打診するケースが確認されています。以前は所属学校やスキルベースで個別の紹介フィーを支払うケースもありましたが、最近は年収の◯%を紹介フィーとして支払うというように、中途と同じような形態での取り組みも増えているようです。

採用単価は以前は90-120万程度が主流でしたが、最近は120-200万円ほどに上がってきている様子です。

コロナ禍以前は学生をアトラクトするためのハッカソンなどのオフライン開催や、食事会などが開かれていました。ウィズコロナ期の現在では学生の意向を確認しながらですが徐々に再開されつつあります。このような交際費も見込む必要があります。

合わせて何人の人事やエンジニアが採用活動にどの程度関わるのか、その工数も見積もった上で関係各所と合意するようにしましょう。

自主成果物

ポートフォリオなどと言われますが、プログラミングスキルをアピールするためにGitHubなどに自身のソースコードをアップロードし、プロフィールに添えるケースがあります。

エンジニア志望の学生の中で、そのような自主成果物をもつ学生は10%程度(残りは授業でプログラミングに触れた程度)と言われていますが、コロナ禍で時間を持て余すことが増えた影響もあり、自主成果物をもつ学生は年々増えています。サポーターズの1on1イベントに参加する学生などは、ほぼ100%が自主制作物をもった状態で参加してくる状態です。

コロナ禍以外の背景として、ITエンジニアになるという決意の早期化、プログラミング学習の早期化、自主制作物がたることにより就活が優位にに進められるという事実が就活生の間で認知されてきたためと考えられます。

ITエンジニア採用はジョブ型雇用化が進行中

従来の新卒採用では新卒一括採用スタイル、年功序列だったため初任給は一律で設定されていました。

2010年代前半には株式会社ディー・エヌ・エーがITエンジニア枠で一般コースとスペシャリストコースに分け、プログラミング試験などを突破するとスペシャリストコースで750万円以上の初任給が得られる形式を取っていました。

2010年代後半にはITエンジニアの新卒初任給を総合職より分離し、400万円台以上に設定する企業が出現しました。2018年に新卒採用をした際、ある程度プログラミングスキルがある学生については「初任給は400万円以上であれば検討したい」という方によくお会いしました。

しかし2020年頃からはメガベンチャーや勢いのあるスタートアップが通年採用を始め、正社員と同等のフローで新卒の評価を実施するところが登場しています。

スキルが全体的に底上げされ、一部では中途社員より成果を上げる学生が登場した結果、中途社員と同等のプロセスで評価や給与提示する必要が出てきています。彼らを受け入れるためになし崩し的にジョブ型雇用が広がっている状態です。

GMOでは23新卒から「No.1&STEAM人財採用~新卒年収710万円プログラム」と題し、一部職種について入社から2年間は710万円に設定すると発表しています。2022年7月7日のWBSでは「インターンシップへの応募が前年度比2倍になった」とのコメントもありました。

不景気や円安が進行した結果、新卒から高待遇を提示する企業と、安定した経営とバックアップ体制のある大手自社サービスと大手SIerで人気が二分されている印象があります。

上位1%の動向

自主成果物をもつエンジニア学生が10%ほどとお伝えしましたが、その中でも際立った成果や実績をもつ上位1%の存在も見逃せません。ここ10年ほどで、その数も少しずつ増加しています。背景としては下記のようなものがあると考えています。

  • IT技術の一般化により、ITエンジニアが身近な存在として志望しやすくなった

  • 親がITエンジニアであるケースが増加し、子供のキャリアとしてITエンジニアを推すようになった

  • パソコンが安価になり、子供でも身近に触れるようになった

  • プログラミング言語の高級化により、挫折者が減った

  • 子供向けプログラミング教材や教えてくれるコミュニティの充実

  • コンテストの充実

  • 部活動の強制が薄れ、可処分時間が増加した

  • フリーランスの働き方が拡がり、学生でも商用プログラミングや納品経験を積みやすくなった

意欲的で優秀な学生が参加するコンテストや、公募、ランキングは定番化しており、下記のようなところで優秀層の存在は確認できます。

  • IPA未踏

  • アプリ甲子園(中高生を対象)

  • U-22プログラミングコンテスト

  • AtCoderランキング

  • SPAJAM

  • ISUCON

  • SECCON

こうしたコンテストに出ることで、学生間の繋がりや、スポンサーやメンター担当企業・社会人との繋がりができています。中にはコンテストで知り合った学生達が集まって起業する例も確認されています。

ただしコロナ禍で、上位学生コミュニティの交流や、企業でのアルバイト開発など実践で学ぶ場が減り、上位1%の絶対数が減りつつあるというのが、サポーターズ学生担当の肌感とのことです。

新卒でもスカウト慣れ

2016年以降、1on1イベントが拡がり、就活生が企業に選考意思を表明するだけでなく、企業が学生を口説きに行く流れができました。

また、スカウト媒体を利用しての就職活動も拡がっています。結果、ここ数年で口説かれ慣れた学生もよく見かけるようになりました。中途のスカウトやカジュアル面談を想起するのが適当に思えます。

こうした背景からスカウト慣れしている学生も登場しています。中途転職2回目のような滑らかなカジュアル面談での受け答えをする学生も居るため、中途と同等の選考フローでも良いのではないかと思うことも少なくありません。

起業という選択肢と悩む人との増加

ここ数年のスタートアップブームと積極的なスタートアップ投資により、学生起業家は増加しています。中には学生時代に企業し、30万円の出資を受けたというハードルも低いですがスケールも小さい起業の事例も耳にしました。

特に東大、京大といったトップ大学に所属する、前述のような上位1%のトップエンジニア学生が、以前は外資IT企業やメガベンチャーに就職していたところ、最近は起業を志すようになっているという実感もあります。

「いつか起業したいのでその勉強のためにベンチャーに入社した」という方も少なくないため、本人のWillと企業貢献のマッチングを意識した配属が求められるケースがあります。

新卒優秀層を採用する意義

ここまでお話してきたようにITエンジニアに関しては新卒一括採用、0からの新卒一括教育をしなければならない人の割合は優秀層を中心に減少傾向にあります。

企業としてはまず新卒に期待するスキルや経験のレベル感を言語化する必要があります。その上でそのような人物がどこにいるかあたりをつけていく必要があります。ここまでして初めて採用費用や工数の見積ができるようになります。 

新卒採用は学生の多様化も高度化も進んでいます。計画立てをしないと無尽蔵に費用も工数も嵩みます。決して安いものではないため、そこまでして入社してもらった人達が1年後、3年後にどうなっていて欲しいかを言語化し、経営層と合意していくことをお勧めします。




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