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「生涯現役エンジニア」を追求するシステムゼウス 役員自ら新卒エンジニア採用に全力

アプリケーションの受託開発をメインとするシステムゼウスは、社員67人のうち実に63人がエンジニア。「生涯現役」を企業理念に一人ひとりが技術を磨き続け、中には60歳を越えてなお最前線で活躍するエンジニアもいるそうです。そんな同社が、中途採用をやめ、新卒エンジニア採用に力を入れる理由とは。ダイヤの原石を見つけ出し、事業のコアを担うエンジニアへと育成するためのポイントとは。取締役COO 飛田直人さんに聞きました。

新卒エンジニア採用・育成のポイント

  • 中途採用をやめ、新卒エンジニア採用・育成に全力

  • 企業理念への共感を重視した採用プロセス

  • 役員自ら会社説明会に立ち、採用活動で得た気づきをすぐさま経営に反映

  • 24卒の内定承諾者4名全員がサポーターズ経由


エンジニアのモチベーションが上がらない仕事は受けません

楓:システムゼウスの強みやこだわりを教えてください。

飛田:私たちの強みはやはり技術力です。まずはクラウド。特にAWSに関しては東京リージョン開設当初から力を入れており、今ではAWSを用いた開発が全プロジェクトの7〜8割を占めています。2018年からはIoTにも力を入れています。さらに、長く電子マネーの開発に携わってきたこともあり、セキュリティに配慮したWebプログラミングや暗号化、電子署名を適用した安全な通信ロジックの実装などに強いエンジニアもいます。
 
 こだわりは、特定工程のみではなく、設計から製造、テストまで一貫して取り組むことです。また、やらない案件を決めています。例えば、今だとオンプレミスのプロジェクトは若手エンジニアのモチベーションが上がらないので受けないようにしています。無理して仕事を取れば売上は伸びますが、プロジェクトが終わるまでエンジニアが苦しむことになる。エンジニアが主役の会社ですから、そういうことが起きないようにしています。

企業理念は「生涯現役」 60歳も役員も最前線でコーディング

楓:エンジニアの「生涯現役」を打ち出してる点も、非常に特徴的です。

飛田:当社のキャリアパスのゴールは、プレイングマネージャーなんです。世間一般によくあるエンジニアのキャリアパスは、「プレイヤーとして活躍した後、コーディングをしないマネジメント職に移る」というものです。しかし、エンジニアとして本質的に楽しいのは、やはりコーディングですよね。また、チームを率いる立場になったとき、「コーディングができるリーダーでないと、メンバーをフォローできないのでは?」という課題意識もあります。そのため、当社では設計からテストまで全工程に携われるエンジニアを育成するとともに、一人ひとりが変化の激しい技術トレンドに対応し続け、エンジニアとして一生活躍できる会社を目指しています。 

 ですから、当社には60歳を超えても最前線で活躍しているエンジニアがいますし、取締役もコーディングしながらマネジメントをしています。新卒採用においても「生涯現役」の理念に共感してくれた方を採用しています。

プロジェクトの成否を決するのは、マネジメントではなくエンジニアリング

飛田:当社の理念から「生涯現役」について説明しましたが、少し視点を変え、IT業界全体からも「生涯現役」の重要性をお話ししたいと思います。

(飛田直人さん/取締役COO)

 IT業界では年々マネジメント層の付加価値が下がってきていると感じています。私が新卒〜30代の頃は、マネージャーを非常に頼りにしていました。困ったときはマネージャーに相談すれば、人材の再配置や増強などに動いてくれて、だいたい解決したんです。私自身も30代でグループリーダーとなり、40代になって経営を学び始めました。

 しかし、私のようなキャリアモデルは、「今のIT業界ではハマらないな」と感じています。理由は、プロジェクトの小型化です。以前は当社でも20~30人規模の開発案件がありましたが、今は4〜5人規模のプロジェクトがほとんどです。

楓:なぜ、プロジェクトが小型化しているのでしょうか。

飛田:2つ要因があると思っています。1つは、テクノロジーの進歩です。例えばAWSをはじめとするクラウドの登場で、昔なら数千万円のサーバーを導入して構築・セットアップしなければ使えなかったものが、一瞬でコードが書ける状況になっています。そのため、少人数での開発が可能となっているのです。

 もう1つは、ニーズの多様化です。動画配信を例にすると、1990年代まではたくさんの人が見るテレビ番組を大人数からなるチームで制作する、の一辺倒でした。今はYoutubeでマニアックな動画を視聴する人が多数おり、そのコンテンツは最少一人で制作しています。見たい動画の好みが細分化し、小さなニーズには小さくコンテンツを制作するということです。システム開発もニーズに合わせて行うものなので、動画配信と似たようなことになっています。技術の進歩とニーズの多様化が作用し、プロジェクトはどんどん小さくなっているのです。プロジェクトが小さくなればなるほど、必然的にプロジェクトマネージャーの役割は小さくなります。

楓:なるほど。では、今は何が競争優位性や付加価値につながるのでしょうか?

飛田:テクノロジーに長けたエンジニアの存在です。AWSのサービスに詳しいエンジニアがいるかいないか、データベースをしっかり設計・構築できるエンジニアがいるかいないか、ReactやNext.jsを熟知したエンジニアがいるかいないか、突出した技術力を持つエンジニアがいるかいないかで、そのプロジェクトの成否が決まるんです。だからこそ、一人のエンジニアの実力がリスペクトされる状況になっていると思います。

中途採用をやめ、新卒エンジニア採用に絞った理由

楓:技術力にフォーカスするならば、一般的には中途採用に力を入れる企業が多いのではないでしょうか。御社はなぜ、中途採用をやめ、新卒エンジニア採用に絞ったのでしょうか。

飛田:当社の場合、新卒で入社したエンジニアが、のちにコアな活躍をするケースが多いからです。

 一般に転職者は、自分の実力や会社の待遇、福利厚生などを総合的に判断し、転職先を決めます。ある意味、シンプルな足し算で決めている感じですね。そのため、企業側から見ると応募者の実力が均一化している印象がありました。それに正直、すでに芽が出ているエンジニアを中途採用しようとしても、GoogleやAWSといったネームバリューのある会社に負けてしまうんです。

 一方、新卒採用の場合、自分の実力も未知数なまま就活が始まるので、ポテンシャルに満ちたダイヤの原石と出会える可能性があるのです。これは理屈じゃなく、ダイヤの原石を見つけてじっくり育成する方が楽しいし、やりがいがあります。未熟なエンジニアを立派なエンジニアに育成するプロセスを内在させているほうが活き活きとした組織になると思っています。大人しかいない村より、幼い子供とかもいる村のほうがいい雰囲気のイメージがあるのと同じです。

楓:実際、新卒入社したエンジニアは育っていますか?

飛田:育っています。新卒採用した社員がコアメンバーとなって、新たなIoTプロジェクトを開拓してくれた実績もあります。その社員は2018年にサポーターズを介して出会ったメンバーです。

役員自ら会社説明会に立つ 採用活動の気づきをすぐさま経営に反映

楓:ダイヤの原石は、どのように見極めているのですか?

飛田:まず、見極めるってほど当社は偉そうにできる立場ではありません。大事なのは、当社に合う学生にどう関心を持ってもらうかです。「生涯現役」をアピールするのもその一環です。生涯現役であるためには、エンジニアとして技術力を磨き続けなければいけません。このメッセージに共感してくれる学生は、深層心理で自分はそうありたいと思っているはず。そういう学生に選んでもらうことが重要なんです。

楓:学生との接点はどうやって作っているのでしょうか。

飛田:当社は決して人気の会社ではありませんので、会社説明会は自然と1対1、多くても1対4くらいになってしまいます。とにかく、この場を重要視しています。大規模な合同説明会にもたまに参加しますが、それは私の修業のために行くのであって、今のところ採用にはつながっていません。そう簡単に伝わる魅力ではないと自負しています(笑)。

楓:説明会から役員(飛田さん)が1対1で話すとなると一見とても非効率的ですが、1対1で向き合えば、響く学生にはダイレクトに響くということですね。

飛田:その通りです。もう一つ、経営者である私が学生の皆さんと対話することで何がいいかって、「新たにこういう事業に挑戦しないと魅力的に映らないな」とか「育成をきちんと仕組み化しないと響かないな」といった気づきを、すぐさま経営に反映できることです。実際、採用活動を通じて新設した制度や就業規則があります。

 確かに効率は良くありません。と言いますか、私は毎年膨大な時間を新卒エンジニア採用に費やしています。だから新卒採用の季節が来ると「また今年もやるのか」とうんざりもします(笑)。でも、どれだけ時間をかけてでも、一人ひとりと向き合い、質の良い原石を見つけたいんです。この時間は当社にとって欠かせないものだと考えています。

サポーターズの紹介から高確率で面接に進む理由

飛田:サポーターズは毎年活用しています。来年度入社の4名は全員サポーターズ経由です。

 サポーターズは、当社に合う学生を紹介してくれます。最初こそ、いろいろな学生を紹介してくれましたが、徐々に精度が上がってきて、今や紹介の段階ですでに当社にマッチする学生ばかり。ダイヤの原石を見つけやすい状態を作ってくれています。

楓:実は、御社に紹介した学生は、同業他社と比較して面接に進む確率が非常に高いのです。これはなぜだと思いますか?

飛田:私たちは透明性を重視し、事業や育成の方針などを明確にするようにしています。いくら当社にマッチする学生でも、本質を伝えないと響きません。ありのまま正しく伝えることを意識しています。採用できてもすぐに離職する、では意味がないので、入社後のギャップが発生しないように、フラットで正直な情報を提供するように心がけています。

 加えて、サポーターズが選考途中の学生の本音を引き出し、レポートしてくれるのが採用率の高さにつながっています。人事や面接官には話しにくいことってありますよね。私も学生の皆さんの気持ちを理解しながら訴求ポイントを絞ったり、先輩社員と引き合わせたりできるので、双方にメリットがあると実感しています。