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エンジニアとの協働でインターンを大幅見直し――試行錯誤の末たどり着いたパーソルキャリア流・新卒エンジニア採用の極意

転職サービス「doda(デューダ)」をはじめ、さまざまな人材サービスを手掛けるパーソルキャリア。社員約5,700人のうち、IT系専門職は約400人(2023年3月時点)。昨年から約200人増えていることからも、ITを活用したプロダクト開発にかなり力を入れていることが分かります。しかし、順風満帆に見える一方で、新卒エンジニア採用には苦い経験もあるそうで……そこからどう立ち直ったのか、同社の新卒採用部 田中里奈さんに聞きました。


新卒エンジニア採用に力を入れる理由

楓:御社は2019年卒から新卒エンジニア採用をスタートされました。なぜ、新卒エンジニア採用に力を入れているのでしょうか。

田中:パーソルキャリアでは、パーソルグループのビジョン「はたらいて、笑おう。」の実現に向け、2019年に-人々に「はたらく」を自分のものにする力を-というミッションを定めました。そして、ミッション推進のために大切にしたいバリュー(私たちが大切にしている価値観)として「外向き」「自分ゴト化」「成長マインド」を掲げています。

パーソルキャリアではこのミッション、バリューを軸に、より多くの人が、その人ならではの「はたらく人生」のオーナーシップを持てる社会を実現していくことを目指しています。
そのためにはテクノロジー活用・サービス開発が欠かせず、IT・テクノロジーへの投資、人材採用に注力をしています。

中でも新卒採用では、組織の成長に貢献いただける方を求めています。今までにない新しい視点をもたらしていただける方や、将来的に組織を引っ張って頂ける方を迎えたいと考えています。また、理系の大学院で研究をしてきた方もいれば、独学でプログラミングを習得し、アルバイトで経験を積んだ文系学部出身の方もいますが一貫して、パーソルキャリアのミッション/バリューとカルチャーに共感して入社していただくことを重視しています。

楓:御社で活躍しているエンジニアには、どんな共通点がありますか?

田中:ユーザー志向であることですね。当社のバリューのうち、社会やユーザーの課題を起点に物事を考えることができる「外向き」が特に大切だと思っています。

(パーソルキャリア株式会社 新卒採用部 田中さん)

業界と自社の魅力を伝えきれず苦戦した過去も

楓:新卒エンジニア採用を始めた当初はかなり苦戦し、試行錯誤されたと聞きました。

田中:そうなんです。新卒エンジニア採用を本格化するにあたり、学生エンジニアの皆さんの認知度を高めようと、インターンシップに力を入れました。2023年卒向けのインターンシップには、20人強に参加いただきました。「新規プロダクトを立案せよ」というお題で5日間のデザインスプリントを実施したんです。でも、予想していたほどの人数を迎え入れることができませんでした。     

楓:一体何が問題だったのでしょうか。

田中:一つは、人材サービス業界が、学生エンジニアの皆さんにとって馴染みがなかったこと。もう一つは、市場全体で新卒エンジニア採用が活発化する中、当社の魅力をきちんと明確化し、学生エンジニアの皆さんに分かりやすく伝えていなかったことだと思います。

楓:なるほど。インターンでは、新規事業開発のテーマについては参加者からも高い満足度だったものの、お題の達成そのものに集中しすぎてしまい、人材サービス業界やパーソルキャリアで働く面白さを伝えきれていなかったのですね。

田中:そうですね。本来はたらくの領域     は学生にとって身近なテーマだと思うのですが、それが伝わっていないことに悔しさを感じました。当社の一番の強みは、「人」です。学生の皆さんのキャリアに寄り添い、良いところを伸ばしたいという気持ちは強かったのですが、今振り返ると、かみ砕いて自社の魅力を伝えることができていませんでした。          

失敗から学び、新卒エンジニア採用のカスタマージャーニーを作成

楓:そこからどう改善していったのでしょうか?

田中:実は、内定を辞退した学生エンジニアの声で多かったのが、「パーソルキャリアが何をしている会社なのかよく分からない」というものでした。まずは、パーソルキャリアの魅力を整理し、インターン前のオリエンテーションで学生エンジニアの皆さんにしっかり伝えました。具体的には、実例を交えながら、点ではなく線で「人のはたらくを支えていく」というまさに私達がミッションとしている、重要なストーリーを伝えるようにしたんです。

さらに、カスタマージャーニーを作り、インターン参加前から内定まで、どのタイミングでどんな働きかけをするか整理していきました。

メンターや人事の関わり方も変えました。本気の育成型プログラムとして、積極的に参加者やチームに助言を行い、考えを促すようにしました。また、随所でパーソルキャリアのカルチャーやプロダクトの説明を盛り込み、学生エンジニアの皆さんに当社の事業を身近に考えてもらえるよう意識しました。

学生エンジニアの皆さんとメンターとの1on1も始め、今感じている不安や将来の展望など、相談しながら進めていきました。人事も同じです。学生エンジニアのキャリアメンターとして、どうすれば自分が思い描く将来像に近づけるのか一緒に考えていきました。ここで重要なのは、新卒採用の全体感や他企業のエンジニア採用の動きといった、当社に偏らない情報提供をすることです。そうでないと、本質的なキャリア支援にはつながりません。

(田中さんと、新卒社員のみなさん)

楓:これはメンターの力量が問われますね。

田中:そうなんです。そこで昨年からは、社内の選抜エンジニアやサービスデザイナー複数名にインターンの企画段階から深く関わってもらい、その後も週一回のミーティングで密に情報共有しながら進めていきました。これにより、学生エンジニア一人ひとりに対して、より的確なフォローができるようになりました。

インターンのお題を「はたらく人々の人生/生活に影響を与えるサービスを立案せよ」としたことも大きかったと思います。お題を進めていくうちに、いつの間にか当社のミッション/バリューを理解できているという仕掛けです。審査員は、当社のCTOやプロダクトオーナーが務めました。アウトプットへのフィードバックはもちろん、パーソルキャリアが実際に投資しうるプロダクトかどうかをざっくばらんに伝えました。これには学生エンジニアの皆さんからも「今後に活きるアドバイスだった」と好評でした。

インターンから選考に移るスピードも意識しました。以前はインターンから2、3カ月後に選考をスタートしていましたが、熱が冷めないうちにと1カ月に短縮。これにより、インターン参加者の本選考へのご応募意思がぐんと上がりました。そして、2024年卒は目標としていた人数を迎え入れることができました。

未来のプロダクトマネージャー養成インターンシップをスタート

楓:インターンのテーマも年々進化していますよね。

田中:今年からは、当社のもう一つの強みである「プロダクトマネージャー」にフォーカスし、「未来のプロダクトマネージャーのための養成型インターンシップ」を展開しています。

コロナ禍や技術革新によって人々の暮らしやワークスタイルは大きく変化し、新たなプロダクトが次々と生まれています。そんな中、社会のニーズを読み解き、プロダクトを育てていけるプロダクトマネージャーの存在が、これまで以上に求められているんです。

当社は、転職サービス「doda」、ハイクラス転職サービス「doda X」、プロフェッショナル人材の総合活用支援サービス「HiPro」など、人の生き方、働き方に影響を与えるプロダクトを生み出し続けてきました。インターンでは、私たちが培ってきた事業開発ノウハウ、実際の開発メソッドを5日間に凝縮してお伝えしています。

大切なのは、エンジニアになりたい学生をしっかり育成すること

田中:サポーターズでは、技育祭をはじめとした技育プロジェクトと1on1面談イベントに参加しています。

楓:中でも未来の技術者を育てる「技育プロジェクト」は、長く協賛してくださっていますね。

田中:「技育プロジェクト」の趣旨には非常に共感しています。インターンでプロダクトマネージャーの養成に取り組んでいるのも、2030年には79万人のIT人材不足が予想され(※1)、社会全体でエンジニアの育成が叫ばれていることがきっかけでした。一方で、「エンジニアになりたい」という学生も多い。そのギャップを是正し、次の世代につなげていきたいです。
※1・・・「IT 人材需給に関する調査」より引用

楓:エンジニアを育てることが、未来を創ることにもつながるということですね。

田中:ただ、技育プロジェクトも私たちのプロダクトマネージャー養成プログラムも、学生の皆さんにうまいこと活用していただいて初めて成立します。サポーターズには、自ら開発経験を積み、キャリアについて主体的に考えている学生が非常に多いですよね。そういうポテンシャルを持った方々を育成できれば、当社で活躍することも含め、可能性はどこまでも広がっていきます。目の前のチャンスをどんどんつかんでいってほしいです。