高専でエンジニアが授業も 独自路線を貫くフラーの新卒エンジニア採用戦略
デジタルに特化したもの創りのプロフェッショナル集団・フラー。特徴的なのは、従業員のうち約2割が高等専門学校出身ということ。フラーが新卒エンジニア採用を強化する理由とは。VPoE エンジニアリンググループ テックリード 畠山創太さん、人事採用グループ 採用ユニット ユニットリーダー 林瑞穂さんに、サポーターズ 代表 楓が聞きました。
新卒エンジニア採用・育成のポイント
「言われたものを作って納品して終わり」ではないフラーのこだわりを伝える
登山アプリをつくるときはチーム全員で山に登る
高等専門学校で採用チームやエンジニアが授業をしてつながりを強化
お客さまと化学反応を起こしながら、未来へ
林 私たちフラーが展開する「デジタルパートナー事業」は、アプリやウェブサイトに課題を持つお客さまに、コンサルティングから事業開発、デザイン、エンジニアリング、データ分析、プロモーションといった全てのソリューションを提供しています。
また、アプリ市場分析サービス「App Ape」を提供しています。こちらは、独自に取得した統計データを使い、競合アプリのユーザー数や男女比といったデータを分析し、お客さまの新たなビジネスチャンスを探っていくものです。
楓 エンジニアは、一つのプロジェクトが終わったら次のプロジェクトに行くといった働き方になるのでしょうか?
林 いいえ、プロジェクトに「終わり」はないと思っています。例えば、一つのアプリを開発したら、エンドユーザーの声を聞きながら継続して改善し、アップデートを重ねていきます。新規の立ち上げが好きなエンジニアには、次の案件、次の案件とお任せすることもありますが、基本的には一つのプロジェクトにじっくり携わっていくエンジニアが多いです。
新卒エンジニア採用を本格化する理由
楓 2023年卒から本格的に新卒エンジニア採用をスタートされましたね。
林 はい。本格化したばかりではあるのですが、23年卒では9名のエンジニアを迎えられることになりました。約半数はサポーターズから紹介いただいた学生です。24年卒は12名という目標を掲げていて、デザイナーも含めると全体で約30名採用したいと考えています。
楓 社員数124名に対し、かなりの採用人数ですね。なぜここまで急速に新卒エンジニア採用に力を入れることになったのでしょうか?
畠山 一番の理由は、アルバイトやインターンの学生と一緒に働く中で、「学生ってめっちゃ優秀だな」と実感したことです。積極的に新卒エンジニアを採用し、育てることで、組織全体に良い影響があるはずだと確信しました。そこで、社内でエンジニア育成のノウハウが蓄積されてきたこのタイミングで、採用を強化することになりました。
楓 学生エンジニアのどういった点を優秀だと感じたのでしょうか?
畠山 主体性とスピードです。とにかく「これやったの?すごいね!」と驚かされることが多くて。自分のアイデアを実現するためにはどうすればいいか、自ら考え、自分なりのやり方で進めていける学生が多く、私自身かなり刺激を受けました。
例えば、「このくらいだったら数日で終わるかな」と思ってお願いした仕事が、翌日にはもう終わっていて、「もう終わったんだ。じゃあこれもお願い」と言ったらそれもすぐに終わってしまって。こういう学生にもっといろんな機会を提供できるなら、フラーだけにとどまらず、業界全体にとって非常に価値のあることだなと思いました。
優秀なエンジニア学生に興味を持ってもらうには
楓 新卒エンジニア採用も競争が激しくなってきています。そんな中、優秀なエンジニア学生に興味を持ってもらうために、どんな工夫をされていますか?
畠山 私たちの仕事の魅力をきちんと伝えることです。デジタルパートナー事業は、ともすれば受託開発のような印象を持たれるかもしれません。でも、フラーの場合、普通の受託開発とは違い、「言われたものをその通りに作って納品して終わり」という仕事は決してやらないんです。
お客さまの課題を理解し、プロとしてさまざまな提案をしながら一緒にデジタルプロダクトを作り、リリース後もグロースに奔走し、新たに生じた課題もお客さまとともに解決する。そういう働き方ができるんです。
「モバイルアプリが作りたい」と思っている学生エンジニアの中には、最初からがっつりプロダクトに携わりたいと考えている方がたくさんいると思います。その方にしっかりと、フラーの魅力を伝えることができればと思っています。
林 すごく大切にしているのは、「私たちがお客さまのデジタルサービスの最初のユーザーである」ということです。キャンプのアプリを作るとなれば、チーム全体で何度もキャンプに行って、必ず自分たちの目で見て、体験してから開発に入るようにしています。
愛されるプロダクトを創るためには、ユーザーが何を求めているのか、自分たちが何を提供すべきかフラットに議論するのが非常に大切です。登山アプリを作らせていただいたときは、サーバーサイドのテックリードもひいひい言いながら山を登ってデバッグしたりして(笑)。オフィスや自宅でこつこつ仕事をするだけではなく、体験しながらUXを作っていくタイプのエンジニアが集まっているんです。
楓 すごい! そして、楽しそうですね。
林 フラーのもう一つの魅力は、カルチャーです。経営陣が「遊びも仕事も本気で」と考えていて、フラットで働きやすい環境だと思います。
最終面接はオフィスにお越しいただくのですが、このオフィスに来てから断られることって本当に少なくて。社員がみんなで仲良くコーヒーを飲んでいて、「今はコーヒー部やってます」とか、日常のありのままの雰囲気を伝えることで、フラーを好きになってくれることが多いんです。
また、当社は社長と副社長がデザイナー出身なんです。デザイナー出身だけど、デザイン会社ではなく、「デザインにものすごく強いこだわりをもったデジタルソリューションの会社」というところがポイントです。この点も、クリエイター志望の学生には魅力的に映っているようです。
高等専門学校と提携し、エンジニアや採用チームが授業も
楓 フラーにマッチするエンジニア学生とはどこで知り合うのでしょうか?
林 実は、フラーは高等専門学校と包括的連携協定を結んでいて、高専生の間では認知度がとても高いんです。まずはそこで興味を持って入社を考えてくれたり、高専卒業後、大学の就職活動で思い出してくれたらいいなと思っています。
楓 なるほど。高専生からの認知度を高めるために、どのような工夫をされているのでしょうか?
林 畠山さんたちエンジニアチームや採用チームが、高専で授業をさせていただいています。
畠山 高専とのつながりは本当に昔からあって、私の出身校でもある長岡高専でのプログラミングの授業は、始まってもう5年になります。実際、22年卒で入社してくれたエンジニアの一人は、私の授業を受けてくれた学生だったんです。
私以外のエンジニアも北海道の苫小牧高専や函館高専などで授業を行っていますし、沖縄高専では継続して、iOSのアプリの授業をしています。
楓 素晴らしいです。一朝一夕でできることではないですね。
畠山 そうですね。講師は本業と掛け持ちで授業担当することになるので、内容を考えたり準備したりする時間を確保するのがそこそこ大変です。また、現地で講義する場合には移動のコストもそれなりにかかるので、片手間に行うのはなかなか難しい活動だと思っています。
なぜサポーターズを活用しているのか
楓 高専との強いつながりを築きながら、なぜサポーターズを活用してくださっているのでしょうか?
畠山 私たちはこれまで、高専や地方、リファラルで採用を進めることが多かったのですが、それ以外にもリーチするにはどうすればいいのかという課題を抱えていました。そんな中、活気があってモチベーションの高い学生たちとコンタクトを取れるサポーターズに魅力を感じました。
実際、23年に入社する新卒エンジニアの約半数はサポーターズの紹介ですから、本当に助けていただいています。
林 出会える学生や紹介いただける学生が多いという点もポイントです。やはり自主応募の場合、完全に未経験で、今のフラーでは採用が難しい方もいらっしゃいます。こちらとしては、せっかく興味を持ってくださったのにお断りするのがとても心苦しいというのが本音です。
サポーターズであれば、こちらの要望を加味してご紹介いただけるので、採用チームの負荷軽減につながっています。
楓 むやみやたらに母集団を形成しても、ミスブランディングになってしまう可能性があるし、工数もかかります。ピンポイントでご紹介できるというのは、企業と学生、双方にとってプラスに働くのではないかと思っています。
畠山 サポーターズさんは単なる就活サービスとしてだけでなく、エンジニアを育てる活動(技育プロジェクト)をされているということもあり、本当に優秀な学生が多いと思います。モチベーションが高く、自分ですでに何かを作り始めている学生が多いです。そういう学生たちに出会える場として、活用させていただいています。
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